『セリヌンティウスの舟 (カッパノベルス)』石持浅海

石持版『麦酒の家の冒険 (講談社文庫)』とはよく言ったものです。本当にその通りだと思いました。別に石持が麦酒を意識したとは思いません。たまたま似通ってしまったのでしょうけれど。
ただ、読者としては、つい双方を比較してしまいます。
『麦酒』は、ミステリではありますが、基本的に絵空事で(小説なのですから、そもそも絵空事なのですが)「これが正解」という解決編は示されなかった物語だったと思います。簡単に言うと、ビールを飲みながら、仲間同士でああでもない、こうでもない、と言い合う・・・それだけのお話でした。
対してこの作品は、ビールを飲みながら仲間同士が議論をするという状況は同じでも、その議論は真面目なんですね。真面目でいけないということはありませんが、『麦酒』を読んでいると、解決編が示されることに違和感を覚えてしまいます。
また、石持作品は、論理展開の強引さが気になることがたびたびありました。この作品はそれが最も現れてしまいました。「ん?そうかなぁ?」という部分を、それはそれとして物語を楽しめればいいのでしょうけれど。

セリヌンティウスの舟 (カッパノベルス)

セリヌンティウスの舟 (カッパノベルス)