『クライマーズ・ハイ』横山秀夫

一気に読んだ。横山秀夫節全開で、とても、男くさい(笑)。
新聞記者ものだが、題材が変われど、組織の中で苦悩する男という基本スタンスに変化はない。
主人公をはじめ登場人物たちは全員、何かしらを抱えており、正直言ってこういう人が周りにいたら嫌だと思う。(欠陥のない人間のがおかしいのでリアルと言えばそうなのだが)が、横山作品に登場するとその欠陥すらも魅力的なのか(そして描かれる女性はどうしてこうもステレオタイプなのか?)。全員がそれぞれの立場で、苦悩し、最終的に、自らの立脚点を見つけるというラストはいつものことなので、安心して読める。
主人公とその友人の息子が山に向かうシーンで主人公の「何故、山に登ると普段言えないことも言えるのか?」(記憶書き)の問いに対する息子の答えに「はっ」とした。また、主人公が聞いた、病院で事故のニュースを見る老婆のつぶやき。あの台詞は確かに気になったけれど、最後にあのような意味を持たせて帰ってくるとは!好きなシーンは、クビを言い渡された主人公に、周りがそれぞれのやり方でフォローするところと、事故現場で記念撮影を行った社員が老犬を撫でていて、それを主人公が見つけるところ。私はここで泣いた。
残念なのは、題材の「日航ジャンボ機墜落事故」のことを、私があまり覚えていないこと。勿論、記憶にはあるけれど、新聞を読む年齢ではなかったらしい。(そして、作中で語られる「大久保事件」「あさま山荘事件」は殆ど分からない)残念だったので、これから読む若い人で事故を知らない方のために→『日本航空123便墜落事故出典: フリー百科事典『ウィキペディアWikipedia)』』http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E8%88%AA%E7%A9%BA123%E4%BE%BF%E5%A2%9C%E8%90%BD%E4%BA%8B%E6%95%85