ここんとこの読了本

月魚 (角川文庫)三浦しをん
古書店『無窮堂』の当主真喜志とその友人瀬名垣の物語。最初の感想は「しをんさん、BL書けるじゃん!」だった。(BLの定義からは外れるのかもしれないけれど)
古書業界の話は本好きならある程度知っているかもしれないし、知らない人は興味深く読めると思います。両想いなんだけど、過去のある出来事からお互いにそれ(それがどれかは想像に任せる!)を禁じている、というのは個人的にかなりツボ。意味ありげに呼び名を変えるのもまたまたツボ!この二人は永遠にこのままでいて欲しいような欲しくないような。

海馬が耳から駆けてゆく (5) (ウィングス文庫)菅野彰
ウィングス文庫、久しぶりに買ったな…。雑誌ウィングスの描き手が半分くらい分からない。それはともかく大人気エッセイの完結編。とても人気のあるエッセイだし、完結させるこたないんじゃないの?と思っていたけれど、あとがきと、更に文庫版あとがきを読んで納得。ここは、笑いを求めて読む箇所じゃないので気をつけて。もちろん初めて読むのがこれでもOKだけど、海馬レギュラーのこれまでの行状を知るために1から読むと更に面白いと思います。

狐罠 (講談社文庫)』『狐闇 (講談社文庫)北森鴻
/シリーズの順番は罠→闇だけど逆から読みました。別に支障はなかったが。(「闇」でちょっと意味深に書かれている元ダンナの正体を知ってちょっとなぁんだ、と思ったけど)
旗師(店舗を持たない骨董屋)宇佐見陶子の物語。「罠」は陶子が主役のサスペンス。「闇」は蓮丈那智がかなり重要な役割を演じている。(蓮丈ものに同じネタあり)。
野間美由紀が解説で書いている通り、描写が漫画っぽい。安っぽいという意味ではなく、漫画をノベライズしたらこんな感じだろう、という意味。登場人物は多すぎず少なすぎず、それぞれキャラが際立っているので、かなり長いけれど一気に読めると思います(私はどちらも一気に読みました)。


([た]1-1)百合と腹巻 Tanabe Seiko Co (ポプラ文庫)田辺聖子
/ポプラ文庫って初めて買ったけど、活字は読みやすいし装丁もステキでいい感じです。ついでに初田辺聖子大阪弁(河内弁?このへん厳密に違うんだろうけど、よく分からない)のご当地恋愛小説集、というところか。どれもよかったが表題作の「百合と腹巻」がやっぱりよかった。妙齢の女性が新しい年下の恋人(これが「百合」って女の子が恋人というわけではない)と、前からの恋人「腹巻」(何かと言うとすぐ「腹巻せー」と言うから)の間で揺れ動く話。年下の恋人はオシャレで、かわいくて、と褒めまくりなのに、腹巻くんのことは一つも褒めてない。でも多分最後に選ぶのは腹巻くんと思われる。ステキな話ばかりです。大阪弁(言い訳略)がネイティブならもっと面白かったのかな。かと言って東北弁じゃここまでステキにならないだろうし(失礼)うーん。


シズコさん佐野洋子
/母娘もののエッセイ…小説?「母娘もの」とジャンルしていいくらい数多の本が出ていると思うし、その数以上に実際の母娘の間はいろいろいろいろなことがあるんだろうと思う。この作品は、母を老人ホームに入居させた娘(佐野洋子)と母との物語を、母の半生を回想しながら(そして認知症が進行しながら)追うエッセイ(小説?)。この関係を簡単に数行の感想で言い表すことはできそうにない。ので幾つかの文章を引用して紹介に代える。

母さんに触れる様になった事はすごい事だった。

ごくふつうの人が少しずつ狂人なのだ。
少しずつ狂人の人が、ふつうなのだ。

ナグラる』ステッグマイヤー名倉
/「プチ日記」の管理人による抜粋日記と書き下ろし。私のお気に入りは「Go Smoking」に掲載のエッセイの抜粋。タバコに関するエッセイで、作者が喫煙者であり愛煙家向けサイトなのでそちらに寄っているけれどその理由もちゃんと書いてあるのだ(これだけで単行本化を期待しているんだけどなー)。書き下ろしや抜粋日記も読み応えあり。インターネット黎明期経験者で今、ブログを書いている人は頷くことが多いと思う。少し固い話も、軽妙な文章で語られるとすんなりと頭に入ってしまう(ような気がする)。特に精神病院の話はとても興味深かった。

水妖日にご用心―薬師寺涼子の怪奇事件簿 (ノン・ノベル)田中芳樹
/お涼(とその手下たち)はいつも通り。○゛ィ○゛ニーと現首相の批判は批判というより「気に食わないから悪口言ってるだけ」にしか見えない。しつこいし面白くない。