『魔 (文春文庫)』笠井潔

/私立探偵・飛鳥井が活躍(と言うと多少語弊があるかも)する中篇2編収録。どちらも、ミステリ的なオチはかなり早い段階で見当がつく。けれどこの二つの物語のテーマは、月並みな言い方になるが、社会病理…と言っていいんだと思う。特に後半の『痩身の魔』にその傾向が強い。私はちなみにこれが初笠井。文章に慣れていないことと、いわゆるハードボイルド文体なのかもしれないが、例えば、綺麗な花があったら「この花が綺麗」と言うのではなく「花が綺麗と思う人間の心理とは」というところから話が始まるのは私の好みには合わなかった。