『収穫祭』西澤保彦

/1982年8月、首尾木村でほとんどの島民が虐殺される事件が起こる。殺された世帯のうち、生き残った3人の中学生とその学校の教師の証言から、犯人は英会話教室の外国人講師であると断定され、事件は一応の解決を見る。数年後、フリーライターが生存者の当時中学生の一人を取材し始めると、再び…。
5部構成で第一部が1982年。2部が9年後の1991年。3部はその4年後で1995年。4部がその14年後の2007年。5部は一気に戻って1976年。年月日がそのまま章タイトルになっているので、2部以降は生存者の中学生が何歳になったのか考えながら読むとよいかも。
西澤作品を読むといつも思うんだけど、普通の苗字の奴はいないのか!ではなくて、いわゆる「普通の人」っていないのか?ってこと。ありていに「誰もが心の中に持つ闇」とか言うには常軌を逸している。かと言って狂人ばかりの物語というわけでもない。これはミステリーに分類するんだろうけれどホラーでもいいと思う。第一章の「嵐の山荘」的な虐殺の物語もこれはこれで怖いんだけど、最後の1976年の短いエピソードが何よりも背筋をぞくっとさせる。とても長いけれど一つとして無駄な箇所はない。一気に読んでも、少しずつでもいいけど、この恐怖は是非体験することをオススメします。