『asin:9784167605094:title』篠田節子

短編集。「観覧車」はさえない独身中年サラリーマンが、お見合い相手とのデートを途中で切り上げられる。要するに振られたわけだが、途方に暮れた彼はその日行く予定だった遊園地に一人で行く。なりゆきで「女子高生」と一緒に観覧車に乗ることになったが、その観覧車に閉じ込められてしまう。
主人公の男のことを解説で永江朗は「非モテ」と表現しているが、まさにその通りで、どこにでもいるような人だけれど、友達になったり、親しく付き合ったりはしたくない。彼が観覧車に閉じ込められるるまでと、ゴンドラの中と、脱出するまでの間に幾つかの挿話があるが、それらが彼を劇的に変化させることはない(少なくとも、そのような描写はない)。この短い物語は「ダメで冴えない「非モテ」の男がある出来事をきっかけに大きく変化する話」ではない。そんな些細な出来事で変わるものなんてないと思いつつ、心のどこかで、安易な出来事をきっかけに「何か」が劇的に変化することを期待しているんじゃないだろうか?
「観覧車」を含め5編収録。