ここんとこの読了本

年を越しているが、年始の挨拶は省略。

身代わり西澤保彦
前の、少なくとも『依存』は再読した方がいい。今回はさほど分量がないけど、読み応えはある。若干の強引さは否めないけど、エピソードの挿入がうまくて説得力がある(というか、飲み会の会話というのは安易で安直なのかもしれないけれど)。そもそも西澤ミステリは絶対的な真理、というよりは、会話の流れて一番合理的な結論が出ればそれでいいというところがある。今回もそうなんだけど、じゃあ、真実はどうでもいいのか?と言うとそんなことはないんだけど、真実よりも…何て言うか…人の行動から、心の動きを推測して、その推測された心理状態について知ることの方が、重要な気がしてくる。…うまく言えないんだけど…。
とにかく依存は再読して!

弥勒の掌 (文春文庫)我孫子武丸
帰宅したら妻が家出をしていた。…と思ったら殺されていた。疑われる夫。妻はどうやら宗教に傾倒していたようだが?
我孫子武丸なので、面白くない心配は全くしていなかった。教師と刑事の二つの視点で語られる物語だけど、この両名どちらにも同情できない(笑)。それにしてもあのオチは。気付かなきゃいけなかった。私も、あなたも。後味の悪さも織り込み済み。

顔のない敵 (カッパ・ノベルス)石持浅海
「地雷もの」っていうジャンルもすごいけどでもそうなんだよね。石持特有の事件の決着の付け方が満載なので、それに納得が行かない人はだめなんじゃないかなー。

バルーン・タウンの殺人 (創元推理文庫)松尾由美
ジェンダー城の虜 (ハヤカワ文庫JA)松尾由美
松尾由美2点。ジェンダーは一昔前のYA向け小説を彷彿とさせられて、それはそれで面白い。バルーンは設定が面白くて、笑えるところも多い。ただ両方ともジェンダー論が気になる。食傷気味。

ゼロの焦点 (新潮文庫)松本清張
某映画を見に行った時、予告編が流れていた。再読だけどすっかり忘れてた。
新婚一週間で失踪した夫を探すため能登に行った禎子。夫の秘密とは?
有名な某ネタだけど、これをまた映画にした時、この秘密の説得力をどうするんだろう?という気がする。

ミス・マープル最初の事件 (創元推理文庫)』アガサクリスティ,厚木淳
クリスティ祭り(個人的)。初読。最後の100ページを切っても犯人が全く分からなかった。こんなに面白いミステリを今まで放置していたなんて!そして出会えてよかった。80年も前に書かれたミステリがこんなに面白いんだからやっぱり読書はやめられない。
殺人は癖になる (創元推理文庫 105-32)』アガサクリスティ,厚木淳
ポワロの考古学もの、という分類でいいのかな?密室殺人もの。読み返して何となく横溝を彷彿させられたのは何故?運命の女、だからか?
五匹の子豚 (1977年) (ハヤカワ・ミステリ文庫)』アガサクリスティー, Agatha Christie, 桑原千恵子
ポワロのマザーグースもの。とはいえマザーグースに従って殺人が起こるわけでなく象徴的に使われているだけ。過去の事件を洗いなおす話なので、サスペンス性はないけど、クリスティ特有の「人間性」が全面に現れている作品。妙に叙情的な読後感。
予告殺人 (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 1-7))アガサ・クリスティー, 田村隆一
地元ローカル誌に殺人予告が掲載された!件の家に興味本位で訪れる人々の前で起きた発砲事件。犯人は誰?その目的は?魅力的な謎の提示と、フェア(だと私は思う)な手がかりで、最後まで面白く読めた。伏線は確かにあったよー。某ドラマの影響で、レティとドラのキャスティングが樋口可南子斉藤由貴で読んだけどちょっと若すぎるね。


お縫い子テルミー (集英社文庫)栗田有起
テルモルは読んだ。
私ごときが平易な言葉で感想を述べるのはどうかと思うんだけど、私が思ったことは、両手に二つのバッグ、というのが象徴。一つは生活。一つは裁縫。裁縫はテルミーにとって食べていく手段でもあるんだけど、それはそれだけじゃなくて、テルミーを構成するもの。「人はパンのみ」のパンが生活道具で、そうじゃないところが裁縫なのかな。それを、どちらかに重きを置くんじゃなくて、両方ともしっかり手に持って歩いていくというところが、重要なんだと、思う。

東京居酒屋探訪 (講談社文庫)大道珠貴
いわゆるグルメガイドではない。居酒屋探訪記だけど必ずしも褒めてない。ほろ酔いで、ちょっと片手に取って読むのにちょうどいい(これはけなしているんじゃないです念のため)。文章もそんな感じできっちりしてない。この方の小説は読んだことがないのだけれど、読んでみたくなった。

水曜日のジゴロ―伊集院大介の探究栗本薫
作家が死ぬと、読者の構えが違っちゃう。

脳男』首藤瓜於
うーん。…話題になった時に読んでおけばよかった。

むかしのはなし三浦しをん
昔話をモチーフにした、オムニバス短編小説集。なんだけど、だんだんモチーフがどうでもよくなっている気がする。昔話と、小説と、結局、どっちつかずになってしまったような…。

田辺聖子の今昔物語 (角川文庫)田辺聖子
翻案とオリジナルがどの程度の分量か分からないんだけど、妙にオチがないお話などは、元ネタもこうなのかしら?と思う。説教くさい話がないわけでもないけど、特に意味のない話も多い。面白いです。

マリア様がみてる 35 私の巣(マイネスト) (コバルト文庫)今野緒雪, ひびき玲音
番外編シリーズ。ちょっとだけ、山百合会面子も出てくるけどね。この話、ここまで設定作ったならまた続編書いたらいいんじゃないかな。おにぎりは好きだけどぬか漬は私、あまり好きじゃないけど…さ。