ここんとこの読了本

読書会参加をきっかけに、今まで意図的に避けてきた一作家一気読みを復活させてみた。追悼の意味もあって、北森鴻
螢坂 (講談社文庫)
メイン・ディッシュ (集英社文庫)
孔雀狂想曲 (集英社文庫)
闇色のソプラノ (文春文庫)
写楽・考 蓮丈那智フィールドファイルIII (新潮文庫)
深淵のガランス
屋上物語 (ノン・ノベル)
北森『闇色』読了。作中の詩及び詩人にそこまでの魅力を感じない。いっそ作品は具体に提示しなければよかったのにな…。(マンガですごい美人てことにして顔を出さないみたいに)。あと、主人公の女子大生の倫理観には驚いた。殿村さんの話術も普通だし。作者が意図したキャラ性と実際の行動や言動が合ってないからちぐはぐな印象で登場人物に感情移入できない。
複数の関係者がそれぞれ事実を入手したりそれに基づいて推理したりするけど、その情報がいつのまにか共有されてたり(全員が知ってる)、推論じゃなくて、事実となってたりする。その割にみんな探偵のように自分の推論は隠したがる。なので誰が何を知ってるのかがわからなくなる。これはこの作品のトリック部分に関わるから敢えてそうしてるところもあるんだろうけど。
冬狐堂の長編を読んだ時にも思ったけど作者の頭の中で出来てる絵を、読者に整理して呈示しきれてない気がする。那智シリーズの時も思ったけど描写がマンガ的な部分がある気がする。マンガなら簡単に説明できるだろうけど、小説という媒体である以上文章で説明する義務を放棄しないで欲しい。
気になること→浜尾さんが殿村さんをなぜそんなに歓待するのか?殿村さんがお金持なのか?浜尾さんが金持で酔狂なのか?文句ばっか書いてしまったけど終盤のたたみかけるように明かされる真実は一読の価値ありと思います。
北森の『孔雀』を読了。安積いらなくね?解説で人物造形がいいとか書いてあるけどそうは思わないなあ。
(以上、Twitterより転記)
北森作品についてよく言われることだけど、料理の描写がいい。いいんだけど、実を言うと私はかといってその料理を食べたいかと言われると微妙。これは個人的なことで、山口出身の北森氏の料理は多分、私の口には合わないと思うから。比べるのはおこがましいけど池波正太郎の料理ほどには食欲はそそられないのでした。
とはいえ、読書会で皆が絶賛してた『屋上物語』のうどんはよかった。思わずうどんを食べに行ってしまったくらい。私が一番好きなうどんは箱根そばのうどんなんだけど(私はこの程度のグルメ。富士そばも悪くはないけどやっぱり箱根そばじゃないと!)讃岐風って言うのかな?ぶっかけ系のうどんが食べたいと思ったのは珍しいことでした。あ、うどんはともかく物語もよかった。この人物造形(さくら婆や杜田)は那智よりずっといいかも。北森作品でキャラ造形がいまいちなものは、もしかしたら、編集サイドの要請があったんじゃないか、という気がする。さくら婆がよかったのは北森の中にそのキャラがきちんとあったからじゃないか。那智がどこか空虚なのは、漫画的キャラとも言えるけれど、編集サイドから「こういう人物は如何でしょう」との要望で書き始めたからなんじゃないかと。やっぱりヒロインは婆さんより美人の学者の方が、映えるし。
話変わって動機の件。読書会でも複数の方がおっしゃっていたけれど、動機が弱い、無理がある箇所が幾つか見られるのが惜しい。きっと、北森にとって動機は物語の構成においてさほど(例えば料理の描写ほどには)重視される箇所ではないんだろうけれども。
さて。読書会のテーマの一つだった、早世した北森は50年後に残る作家か否か?
正直に言うと、残らないかもしれない。ただ、それをもって北森作品がよくないということじゃない。何かしら人の記憶に残るものには強い、何かが必要なんじゃないかな。それはしばしば『華』とか『毒』とか言われるもので。あればいいというものでもないのかも、しれないけれど。料理で言えばすごく美味…かもしれないけれど、『メイン・ディッシュ』における、老若男女誰もがおいしいと思う究極の料理の、タネは○○だったわけで。そうするとその逆ですごくまずい料理が人に記憶に残って、結果、後世まで残ってしまうかもしれない。北森作品には最後の何か、一つまみの塩か胡椒か分からないけれど、それが足りない。そんな気がするのです。
でも那智も陶子も雅蘭堂だってまだまだ読みたかった。早すぎる死はただただ残念です。


フェティッシュ (集英社文庫)』『腕貫探偵 (ジョイ・ノベルス)西澤保彦
『フェティッシュ』はミステリじゃなかったのね。クルミと三人の少女がいつどこで出会ったのか?彼女らの目的は結局何?(殺人?)とか色々疑問が残ってしまった。ついミステリと思って読んでしまう。腕貫探偵は安楽椅子探偵の面白い形で、こういう変な(褒めてます)設定はさすが!と思う。そしてこの設定は単に探偵が公務員(ここも本当はあやしくて、悩みがある人にしか見えない幻想なのかもしれない)ということだけじゃなくて、探偵が全てを解決しないところ。腕貫探偵はヒントしか与えない。それを聞いた側がそこから結論に至る論理を導き出さなきゃならない。ここが平凡な安楽椅子探偵ものと一線を画しているところだと思う。


百舌姫事件 (トクマ・ノベルズ)太田忠司
久しぶりの俊介君は今回また一つ大人の階段を登ったわけで。読者はすっかり騙されたけれど。
ブラバン (新潮文庫)津原泰水
ちょっと、私が読むには年齢が足りなかったかもしれない。吹奏楽部における人間関係は面白かった。
ボトルネック米澤穂信
後味悪!好きだけど。実際、自分ひとりくらいいなくても地球は周る。けれどそれでも何か意味があるんだろうと、ある意味自分をごまかして生きてる。それをここまで徹底否定するって本当にすごい。
お釈迦様もみてる 自分応援団 (コバルト文庫)今野緒雪
この展開は望むところではない!BLに持っていけば女性支持者が増えるんだろか…。微妙にBLではない気もするんだけどな…。