ここんとこの読了本

天夢航海 (ソノラマ文庫 (826))』『こんなに緑の森の中 (ソノラマ文庫)谷山由紀
「天夢」は連作短編集。主人公は女子高生。「緑」は長編。主人公は元、野球少年。と全く違う設定の物語だけど、大きなテーマは変わらない気がする。どちらも「ここよりほかの場所」(「天夢」の最初の短編の題名より)に行きたい子たちの物語。こちらも全く設定は違うけど小野不由美の『魔性の子 (新潮文庫)』もテーマは同じじゃないかな。中二病と、そういう言い方をすれば一言で済んでしまうことかもしれないけど、誰もが一度は振り返…じゃなかった、通る道なんじゃないかな。一度もそんなことを夢想しなかった人はきっといまい?
私はもう、彼らの倍も歳を取ってしまったからノスタルジーとして読めたけれど、渦中の年齢の頃に読んでみたかった、な。
昭和ミステリ秘宝 火の接吻―キス・オブ・ファイア (扶桑社文庫)』『戸川昌子傑作シリーズ〈第4〉猟人日記 (1966年)戸川昌子
猟人日記」は角川文庫版(S46初版)で読みました。「猟人」は、冒頭、まだ20歳前の垢抜けない女性が、クヒオ大佐みたいな奴に弄ばれ、挙句、妊娠を苦に自殺する。女性の姉が復讐を誓う。そこから、クヒオ大佐の懲りない日々が描写されるが、同時に、彼に復讐の手が伸びている。長編だけど、さほど長さは感じさせず一気に読めた。ちょっとしたエピソードの配置もなかなか。クヒオ大佐の手口もむしろ面白い。「火の接吻」は構成の凝り方を楽しむべきなんだろうな…。
スペードの女王 (角川文庫 緑 304-31)横溝正史
手練の彫物師が或る夜、連れて行かれたのは謎の洋館。そこで眠れる美女の内股のきわどいところにスペードの女王の刺青を彫るように命じられた。後、彫物師は謎の事故死を遂げる。その後、内股にスペードの女王の刺青のある女の首なし死体が発見された。
と、まぁつかみはOK。