ここんとこの読了本

どちらも小説であり娯楽小説という意味では共通だけど「聖域」はSF(伝奇)で「夕雨子」はいわゆる中間小説。全く違うこの2作品の共通点は「東北」かもしれない。(あと、入手困難ってところも)
藤本泉呪いの聖域 (ハヤカワ文庫 JA 113)
気になったところを引用します。

小河原孝は亡父と同じように、むつ小川原巨大開発の構想の周辺へ、自分の故郷に対する夢をからませていた。雪花里村のその土地は、国有林に隣接しているので、政界への働きかけによっては、そちらをも払い下げてもらう望みがある。あの辺には、近いうちに超巨大原子力発電基地もできるはずだし…。

「鬼というと、そりゃ悪い者だ、おっかない者だと、知らない人は思うべ。だども、ここの鬼は善い鬼でセ。つまり、本当の人間ずうことで、わしらの先祖でセ。神武天皇さまよりずうっと古いだで、大したものでごす。いったい、この東北はな、大昔から…、いンや関東もそう、お富士さまもそう、ずっとずっとあっちのほうまで、大昔から鬼の国だったのをな、悪い人が来で、火矢を打ちこんで、むりやり攻めて盗ってしまったであンす。そんだば、その人は仇だべ?それェ、鬼のムラには人は住めぬ言うはそのことだおん…」

三浦哲郎夕雨子 (講談社文庫)