ここんとこの読了本

加納朋子ぐるぐる猿と歌う鳥 (ミステリーランド)
北村薫野球の国のアリス (ミステリーランド)
またまた「ミステリーランド」から二冊。またしても特に意図はないのだが「日常の謎系」の作家を偶然選んでしまった。とはいっても内容は全く違いました。
「猿」は東京から地方(九州)に転校してきた男の子、森(シン)が主人公。父親の転勤に伴う転校で、住まいは社宅。通う小学校は全員が社宅の子ども、という環境。そこに謎の「パック」が現れる。…まず、シンのキャラがいい。周りからは乱暴者で通ってるけど、彼には彼の哲学があるのだ。そこがかっこいい。物語は「パック」の謎と、シンの小さい頃の思い出と、転校前の悲しい思い出を解き明かしながら進んでいく。どれも素敵なお話なんだけど、特に小さい頃の思い出が、衝撃的で悲しくて謎に満ちている。それが最後に解き明かされた時は、心から、本当によかったなぁ、と思えた。シンだけじゃなくて、同じ登校班(登校班!!)の竹本兄弟・あや・ココもとてもいい。シンは、脳みそ筋肉質(失礼)に見えるけど色々と屈折があるし、悲しい思い出もある。読者はシンのそれは早いうちに知ることができるけど、単なる登場人物と思っていた竹本くんたちにもそれぞれの色々な事情…というと大げさだけど、普段はそんなこと言いふらしたりしない、でも心の中に色々な気持ちがあることを知らされる。社宅の問題、いじめ、児童虐待、ネグレクトなど色々な問題も描かれている。これらは児童書ということでさらっと書かれているけれど、それは、表面をなぞっただけ、というより子ども目線で、子どもに分かる範囲で分かる言葉で描かれたものだと思う。
私も社宅の一員になったような、でもそれを見守っている街路樹の一本になったような、そんな不思議で素敵な物語でした。
「アリス」(題名だけ見るとこちらが加納朋子作品のようだ)は、野球の得意な女の子「アリス」がある日鏡の国に入ってしまった。そこはこちらの世界とは「あべこべ」。そこで野球の試合に出ることになる物語。…野球が好きでルールとか詳しい人は面白いと思う。(正直、ルールを知らなければ分かり得ないオチだと、ちょっとつまらない)