ここんとこの読了本

佐藤友哉デンデラ (新潮文庫)
フリッカー式以来のユヤタンだが、読んで驚いた。なかなかいい。解説で法月氏も書いているが、登場人物(人物以外も)の徹底的なペラさ。あえて共同体の主張の全面対立を描かずに崩壊させたところなどがとてもよかった。ただ、映画とはその目指すものが全く違うと思うけれども。
藤本泉呪者のねぶた (1977年) (ノン・ノベル)
暴君の父親と、秘密のねぷた絵と女将軍の首、父親をめぐる事件の犯人は誰?という緊張が最初から最後まで貫かれる。それだけでなくて最後には、ある秘密も明かされる。作者得意の「えぞ」もたっぷり。気になったところを引用します。

「お前は、山人の話ィ、知ってるだろ」
岩木山に住んでる大男だべ」
(中略)「身の丈が、軒に届くほどあって、天窓から家の中アのぞきこむ、怖(おっが)ネ鬼だけど、悪いことはしない。飯食(か)せれば、おとなしく帰って行(く)だど」
「あの話こそ、津軽の人間の絶え間ないひもじさが生んだ幻想だよ」(中略)
「誰が腹減って死ぬだ?みんなえぞで生まれ育った百姓たちだ。関東御家人の裔は、どんなときでも生き残るノセ」