ここんとこの読了本

殊能将之子どもの王様 (ミステリーランド)
面白かった…というのは、ちょっと違うかもしれない。読み終えて暫くぼんやりしちゃうくらいだった。私が子どもだった頃、これを読んだらどう思っただろう?
この物語の主人公は「ショウタ」。普通に元気で心やさしいところもある小学生の男の子だ。もう一人の主役は「トモヤ」。ショウタの友達だけどこちらはちょっと病気がちで、ショウタに面白かったり怖かったりするお話を色々してくれる。そんなトモヤから「子どもの王様」の話を聞いたところから物語は始まる。「子どもの王様」って何だろう?トモヤいわく「ひげを生やしてるけど、子どもなんだ」
物語のメインである「子どもの王様」のストーリーとは別の、ショウタの家庭や学校の様子がとてもよい。たとえばいじめの被害者は100%被害者ではなく、子どもなりの人間関係の中で成り立っていること。また、ショウタの家庭は決して恵まれているわけではないけど、ショウタとサオリ(ショウタの母)のお互いを思いやる気持ちで、この家庭はある意味、幸せな状態にある。…今、私はとてもつまらないことを書いている。ここは本文を読んでほしい。また、団地内に起こるトラブルは大人も顔負け。
ミステリーランド」は子ども向けの本だから、物語の中に出てくる人や状態や現象を説明する便利な大人の言葉は存在するけれど、作中には一切、出てこない。その代わり、ショウタやトモヤの言葉で読者に説明される。そしてその方がずっと、怖い。
いっぱい、色々なことが詰まっているのに、短い物語なので、ラストまではあっという間。衝撃(どこに衝撃を受けるかはともかく)のラストまで一気に読んでほしいような、もったいないような…。でも読まないと損してるよこれは。
麻耶雄嵩神様ゲーム (ミステリーランド)