『百年の誤読 (ちくま文庫)』岡野宏文, 豊崎由美

/題名の通り、1900年から2000年頃にかけてのベストセラーを岡野氏と豊崎氏が対談形式でメッタ斬りする内容。文学に限らず、ハウツー本も対象。ハウツーなどは、後年に読み返せば嘲笑を免れないと思いますが、文学もその例に漏れず。そもそも価値観や善悪が時代によって変化するのは当然のことなので当時のベストセラーが現在、読むに耐えるとは限らないのですね。文学史に登場するような作品もメッタ斬りするところは痛快ではありますが、文学の好みは人それぞれだと思うので、自分でも読んでみてから評価を決めて欲しいと思います。『細雪』はお二方とも絶賛されてて、私も好きな作品だけど、好みで評価は分かれると思う。田山花袋の『蒲団』の読み方は私も同じだったけど。二人が高評価している佐藤春夫は私はいまいち。とはいえ褒めてる作品もあるので、私はとりあえず『もものかんづめ』は読んでみてもいいかなぁと思いました。

『下り「はつかり」―鉄道ミステリー傑作選 (光文社文庫)』鮎川哲也編

/「鉄道ミステリー」と聞くと西村京太郎に代表される時刻表アリバイものを想像するが、このアンソロジーに収録されている作品はもっと懐が広い。作中に「鉄道」が使われればいいんじゃないか、という気さえするし、そもそも事件と解決を伴うミステリーですらないものもある。その代表作は冒頭の『ジャマイカ氏の実験』(城昌幸)と『押絵と旅する男』(江戸川乱歩)だろう。特に後者は再読何度目か分からないが読むたびに素敵だと思う。小説の読み方として、語り手を疑うやり方があるが、それをすると、まさにこの物語はどこからがゆめでどこからがまことなのか、分からなくなってくる。『下り終電車』(坪田宏)の皮肉なラストも秀逸。星新一の『泥棒と超特急』も見事なショートショート。永く読まれ継がれている作品はやっぱり素晴らしいものだと実感しました。

『絶叫城殺人事件 (新潮文庫)』有栖川有栖

/おなじみの火村とアリスが一風変わった特徴を持つ館で事件に遭遇する短編集。『壷中庵殺人事件』は、地下の密室で壷を頭に被せられた死体が見つかるという本格的な密室もの。表題作は近年流行りのテーマかもしれないが、ラストシーンは妙にぞっとさせられた。

『支那そば館の謎 裏京都ミステリー (光文社文庫)』北森鴻

/謎の寺男、有馬次郎が京都の一寺社千光寺周辺で起こる様々な事件を必殺仕事人のごとく解決していく。事件の解決に伴って紹介される京都の習俗が興味深い。

『マリア様がみてる 33 ハローグッバイ (コバルト文庫)』今野緒雪

/祥子さま、卒業。
この巻の説明はこれに尽きるのですが、それだけじゃあんまりなんで。
卒業前に引っ張りすぎたせいか、実際の卒業式編は淡白に終わった感じがしました。祐巳もすっかり薔薇さまの貫禄。最終回は寂しいけれどこれは祐巳・祥子編の、ということなので、続きを期待。『お釈迦さま』もあるしなぁ…。