『おれは非情勤 (集英社文庫)』東野圭吾

タイトルから、ハードボイルド系だと思っていたけれど、文章が平易で、舞台が学校ばかりなことに驚いた。先に解説を読んでおけばよかったかも。
小学生向けの短編ミステリとはいえ、東野圭吾の器用さが十二分に発揮されている面白い作品集だった。ただ、後半の章は前半ほどは面白くなくなってしまっていた。殺人や賭博が何らかのコードに触れて、題材を制限されてしまったのだとしたら、残念なことである。
「人を殺してはいけない」と子どもに教えるとき、人を殺したいと思う感情そのものを否定するのは間違っているのではないか。
とは、ある人が言っていた一つの説。
ミステリとしてのまとまりの綺麗さもさることながら、物語そのものも魅力的でした。オヤクソクで、主人公の非常勤教師が犯人の子どもたちの前で「さて」と言うのだけれど、そこで言われることが毎回とてもいいのです。私は「ムトタト」の回が一番好きでした。そうそう。子どもって、超自己中というか、自分がとにかくすごい存在だと思いがちで、それはそれでいいんだけど、それに捕らわれてしまうのはよくないよね・・・ということを物語を通して上手に語りかけている作品だと思いました。
スト2編は少年が主人公のお話。二編目の「幽霊からの電話」は、私の「泣けるミステリベスト2」作品になりました(1は宮部みゆきの「サボテンの花」)。
内容的に、雑誌掲載→集英社文庫ではなくて、児童書のレーベルで(青い鳥文庫など)出版し、子どもたちに読んで欲しい作品だと思いました。

おれは非情勤 (集英社文庫)

おれは非情勤 (集英社文庫)