ここんとこの読了本

blogって更新しないとこうも敷居が高くなるものなのか…。


ロズウェルなんか知らない (講談社文庫)篠田節子
/TVもねぇ、ラジオもねぇ、車もそんなに走ってねぇ…もとい、温泉もない、名所も名産品もない過疎の町、駒木野。そんな町を再生すべく青年団がとった手段は「日本の四次元地帯化」だった。
主人公の靖夫はどこにでもいる30代のいわゆる田舎者。最初のうち彼の「自分の常識は他人(世間)の非常識」ぶりにはイライラさせられるが、UFOだ、オカルトだ、と悪ノリしていく様は逆の意味でツッコミを入れたくなる。過疎の町の再生、というと都会に住む者には遠いところの御伽噺のように感じるかもしれないが、手は出さないのに口だけは出す、いい時代を知っている長老たちを相手に「時代は変わった」と内心で罵倒する様子はあなたにも覚えがあるのでは。靖夫たちのしたことを正しいとか間違っているとか言うのは勝手だけどそれは「ヨソ者」の意見でしかない。例えばこれが完全に違法なことだったとしても、外部にいる何の利害もないはずの自分が意見を言うのはただの勝手なもの言いにすぎない…ということを何となく考えた。

オテル モル (集英社文庫)栗田有起
/両親と、妹のダンナとその子どもである姪と暮らす希里が就職したのは「オテル モル」。そこはホテルだけれども、奇妙な建物に奇妙な客が来るところだった。
「オテル モル」がどのように奇妙かというと、入り口は「ビルとその隣のビルの間が、ひとひとりなんとか通れるほど離れているのに気付く。(中略)わたしは体を横にしてそのすきまに入る」そのすきまを奥へ奥へ進むと入り口なのだ。
奇妙なのはオテルだけではない。希里の家族もまた奇妙な関係だ。
最初に言ってしまうと、この物語には「解決」や「大団円」はない。けれど「何も起こらない」ということもない。微妙で繊細な出来事が起こる。それは、今日より明日が、明後日が、ちょっと変わっていく可能性を示唆するだけ。でも、分かりやすい解決や大団円よりこちらの方が安心するのはどうしてなんだろう?

桜宵 (講談社文庫)北森鴻
/ビアバー「香菜里屋」の物語。現実は発泡酒どころか第3のビールとコンビニで買ったポテチでも、美味しそうな料理とウィットの聞いた物語で心は豊かに。

くうねるところすむところ (文春文庫)平安寿子
/梨央は恋人(不倫)兼上司とケンカの末イキオイで仕事を辞めてしまう。…おいおい、と思うけれど、トビの親方(と言っても30代)に一目ぼれした彼女のその後の行動力はすごい。小説らしくご都合主義なところは多少、というより多々あれど、出過ぎない軽妙な文章と勢いはストレス解消にいいかもしれない。スカっとすることは確実。ドラマは見てないです。

女王様と私歌野晶午
/「葉桜」は完全にダマされたんだけど、こちらは途中でオチが読めてしまった。とはいえここまで酷いオチとは思わなかった。それにしてもこの主人公ムカつく…。ここまでムカつく人を書けるのがすごいと素直に思えないくらいムカつく…。

真相横山秀夫
/表題作を含む5編からなる短編集。表題作は、主人公・佳男が描いていたストーリーが徐々に破綻して全く別の物語が見えてくる。「人は見た目が9割」じゃないけど「人は思い込みが全部」なのかもしれない。それぞれは短い物語だけれど、真実と、それを暴くこと(罪を犯した者が罰せられること)の難しさを考えさせられる。

麻耶雄嵩
/最近トシだし、そろそろミステリは読めなくなってるかな…と思ったけれど、冒頭の間取り図と登場人物一覧、妖しい館、嵐の山荘が予感される舞台に最初からわくわくして読み進めた。結末がここまで後味が悪いとは思わなかったけれど、用意された小道具は全て楽しんで素直にダマされた。またこういうのが読みたい。ヘタレミステリ読みだけど、やっぱりミステリが好き。

硝子のハンマー (角川文庫)貴志祐介
/新刊の頃から気になってたんだけど、ハードカバーだと結局読まないからと文庫化を待ち、ブックオフに並ぶまで待ってしまった(貧乏)。推理作家協会賞を受賞した作品だけれど、厳密にはミステリとは違うと思う。二部構成で、第一部は探偵が犯人を解明したところでそれを読者に明かさないまま第二部となってしまうので、かなりやきもきする。第二部は「青い炎」の雰囲気。私は第一部の方が好きだし、第二部はもっと短くてよかったと思う。トリックは正直「驚愕」とは言いかねるけれど、物語の構成と読ませ方はほぼ全ての作品にハズレがない作者ならでは。さすが。続編はもっと早く読もう。

QED ventus 御霊将門 (講談社ノベルス)高田崇史
/面白いんだけど、基本的に一冊(一作品)読みきりにしてほしい。(別の作品に繋がる、っていうのは好き嫌いが分かれると思う。私は萎える方)

本格推理委員会日向まさみち
/同人誌?と言う言い方は同人誌をバカにしてるか。

夜のピクニック恩田陸
恩田陸作品はあまり読んでいない。この作者の書く、「何か起こりそうに思わせておいて何も起こらない」ことがうまくはまれば面白いんだけど、はまらないとただの期待はずれに終わってしまうからだ。この作品は実在するらしい夜通し歩く(カーや横溝とは関係ないようだ)行事を舞台に参加者の少年少女の心を動きを追ったもの。ただそれだけ。でも「それだけのことがなんでこんなに楽しいんだろう」だ。とにかく読め。夏に読もうと思って数年借りたままだった。

配達あかずきん (ミステリ・フロンティア)
晩夏に捧ぐ<成風堂書店事件メモ・出張編> (ミステリ・フロンティア)大崎梢
/この作品の舞台の「成風堂」が最寄駅の駅ビルの書店とよく似ていて(もちろんこんなキュートな店員や探偵はいないと思うが)もしやモデル?と思ったけれど、全国で多くの人がそう思っているに違いない。一作目は冒頭から素敵な謎とその解決をしてくれて、嫌でも期待は高まるが、それを裏切らない内容だった。私は書店で働いたことはないけれど、現役書店員もそうでない人も、楽しめる内容だったと思う。二作目は直球のミステリになっていて、ちょっと意外だった。…短編の方が好きだけれど。

葉桜の季節に君を想うということ (本格ミステリ・マスターズ)歌野晶午
/単行本を新刊で買って、本棚に寝かせること5年。熟成させたからより面白いです(負け惜しみ)。今更だけど、面白かった。もっと早く読むべきだったです。すみません。素直にダマされました。後から読み返すと若干、苦しいところもあるものの。最初からオチを知っていたらここまで楽しめなかったと思う。やられた。

お釈迦様もみてる 紅か白か (コバルト文庫)今野緒雪
/まさか本当にやるとは。…が、正直な感想。これ、マリみての時系列に追いつくまでどれくらいかかるんだ?

四つの終止符 (講談社文庫)』西村京太郎
スパイク (光文社文庫)松尾由美