『“柊の僧兵”記 (徳間デュアル文庫)』菅浩江

/解説(鏡明)で知ったが、この作品は作者の最初の長編で1990年初出らしい。2000年に緒方剛志のイラストで再販されたのは幸運なことだし、この物語にそれだけの力があったということにもなるんじゃないかと思う。
砂漠の世界。主人公ミルン以外の多くの人々は体が大きく力が強く色が黒い。ミルンとジーナとその妹アジャーナだけは力が弱く、色が白く瞳が青い。彼らは「白い子供」と呼ばれている。砂漠にはオアシス(聖域)があり、神ニューラに光の矢を打つ大事な役目は村の英雄であるミルンの兄が担っていた。ある日の儀式の際、空からネフトリアと名乗る異星人たちが来訪。村を襲った。ミルンとアジャーナは命からがら逃げ、賢者「柊の僧兵」を探す旅に出る。「柊の僧兵」と合流し、村々で様々な人と出会い、世界の成り立ちを知り、ミルンはネフトリアとの最終決戦に挑む。本当はもっと複雑な設定なのだけれど、それを書いたらキリがない。
ミルンがネフトリアと手を組んで原住民を根絶やしにするという未来もありえると、読みながら思った。ジュブナイルレーベルでその展開はないとは思えたけれど、人間がやってきたのは常にそんなことばかりだったから。でもやっぱりミルンはそんな未来は選ばない。原住民側もまた、ミルンたちを受け入れて共存していく。この物語で、原住民は力が強いが知能は劣るという設定を、架空のものとはいえできたことがうまく言えないが、すごいと感じた。また、物語では敵役だけれどネフトリアも悪ではない。ミルンが選んだ未来とは逆の選択をした者たちの末路だった。とはいえ、ミルンの星がネフトリアと同じ未来を歩まないとも限らないのだ。