ここんとこの読了本

宮部みゆき名もなき毒 (文春文庫)』『誰か Somebody (カッパノベルス)
「毒」を読んだら既読のはずの「誰か」のことをすっかり忘れていたので再読しました。「毒」は冒頭から無差別連続毒殺事件のショッキングなシーンから始まりますが、読み進めるうち、こんなのは「ぬるい」と思わされます。文字通りの毒だけでなく、世の中の「普通の」人のすぐそばにある/いる「毒」がこれでもか、と描かれていきます。解説にある通りその萌芽は「誰か」にもありました。読み返すとそれがよくわかります。後味の悪さは「誰か」に軍配が上がるかな(それゆえ私は、読後、物語の筋の記憶を消し去ったのでしょう…それじゃなんの意味もないのに。でもそれくらい後味悪かった…。もちろん、そこは宮部みゆきのことですから、希望はあるのですけれども)。厚みはありますが、読み始めたら止まらないです。
桐野夏生女神記 (角川文庫)
古事記の「イザナギイザナミ」神話を土台にした古代ファンタジー…になるのかな。語り手「ナミマ」の島の暮らしの描写は『東京島』を髣髴とさせられるところもありました。全ての女性に。
北森鴻ちあき電脳探偵社 (PHP文芸文庫)
この作品の経緯は解説で初めて知りました。この作品がなかったら、私たちは蓮丈那智や冬狐堂や雅蘭堂に会えなかったかもしれない。これから新しいものを知ることはできないけど、こうして埋もれていた作品が読めるようになったのは喜ばしいことだと思います。
柳美里石に泳ぐ魚
処女作なので、表現や文章が今より穏当(という言い方も正しくはないのですが私の貧しい語彙ではこれしか浮かばなかった)な気がします。これは、例の裁判を経て出版された改訂版ですが、私は雑誌掲載分を所持しているので、読み比べをしてみたいと思っています。